「そっか……じゃ、しばらく来ないんだ」


「うん……ごめんね?忙しい時期に」


暗いから良く有岡くんの顔は見えないけれど。


俯きがちになっている分、
もしかしたら今の話で気分を害したのかもしれない。


あまり良い話ではないし……。 それに、こんな時期に。もう少しすれば、夏休み期間特別のミッドナイト上映も始まるって言ってたっけ。


そうなれば尚更忙しくなる。


「や、バイトの事は気にしないで良いからさ。しっかり検査受けて、異常見つからないように、ね」


「大丈夫。絶対異常は無いから!」


本当は検査なんかしなくても大丈夫なのに。


高橋にそれを言えば経過観察も大切だと怒られたっけ。


いつもそばで診てくれてるから大丈夫だと思うんだけどなー…。 仕方ないからさっさと検査受けちゃって、退院して、バイトしなきゃ。


「あ、じゃあここで……またね」


交差点まで来て、私は違う道を行く有岡くんに言う。


「またな」


にっこり笑う有岡くんに、あたしはは背を向けて横断歩道を渡る。


……こんな風に普通に病気の事を有岡くんに話せるのは、あさみや椿みたいにあたしに良い意味で気を遣ってくれないから。