だけど、今は何かを言って欲しい訳でも、

慰めて欲しい訳でも無い。


ただ、自分でも分かるこの不安定な気持ちを安定させる間だけ、家に泊めさせて欲しい。


それだけなの。


それに…過程を話すだけで涙が出てきてしまうから。


今はそっとあたしを置いてくれる場所が欲しい。

「怒られてもいいからそこに行きなよ」

聖くんはできるだけあたしを家に置きたくないらしい。

でも、今頼れるのはここしかない。


「やだよ。いいじゃん!どうせ今日も高橋ん家泊まりに行くつもりだったんでしょ?」


あたしがここにいるってことを言わないなら行ってもいいから、あたしをしばらくここに置いて欲しい。


少しだけ顔を上げて、聖君を見れば、聖君はあたしへと向けていた顔をふいっと逸らした。


「……いやね、今日は」

一瞬視線を泳がした聖くんにやっぱりか……と思ったけれど、表情と歯切れの悪い返答からちょっと違ったんだってことを感じ取る。

はっと女の勘が発動する。もしかして、高橋じゃなくて。


「……別の人の所に泊まるはずだったの?」


なんてごまかそうか言葉を模索している聖くんを遮り、聞く。

一体どれだけの人の所に泊まり渡ってるのか。

誰の家にお泊りに行く予定だったのか。

聖君の私生活に干渉するつもりなんてないけど。

目を細めて聖くんを見れば、当たったようで。