小さな四角く区切られた密室の中。
こんな時に限って誰もいない。
乗り込むのもあたしと高橋だけで、人が多くはないものの行き交う場所から中へ一歩入れば、静か過ぎてエレベーターの機会音もしっかりと聞こえる。
―――前にもあったっけ。
こういうの。前も、こんな気持ちで乗っていたような気がする。
高橋はあたしのことを考えてくれてるんだろうけれど、あたしの気持ちのことは分かってくれてなくて。
あたしはそんな高橋に落胆や苛立ちの感情を持って。
あの頃も、高橋は分からなかったけれど、結局今、も。
今も何を考えてこんなことをしているのか。
どうして昨日あんなことを言いだしたのか。全く理解出来ない。
……あれから距離は少しは近くなって。
高橋のことをいろいろ知って。
高橋のこと、少しは理解してるつもりでいたのに。
全く変わってない。
結局分かんないんだよね。そう思うと、何だかおかしくなってきて、ふっと自嘲の笑みが零れた。
「……荷物。返して貰えますか」
ガタン、とエレベーターの音が聞こえる静寂の中、背中を向けている高橋に背後から声をかける。
「どうやって帰るつもりですか?」
前を向いたままあたしに質問してくる高橋。
荷物を返してくれるような気配は無い。



