「え?」
一定のリズムで撫でられていた手が、頭の上で止まる。
「っ――、やっぱり!こんな傷がある女、嫌になった!?」
ガバッと顔を上げて、
見えたのは少し驚いたように目を見開いた高橋の顔。
その顔が涙で歪んで見えて、拭う暇もなく次々と零れるように落ちていく。
「高橋は別れたいんでしょ?大学にでも行って貰ってあわよくば好きな人でも出来てそっちに行ってもらえたらって――」
「岡本さん」
「そっちに押し付けちゃえって思ってるんでしょ?遠回しに言わないで素直に言えば良いじゃん!」
“別れよう”って――
やっぱり、傷もあって、素直じゃないこんな女嫌だって。
自分で口に出して言えば、高橋の顔が固まる。
図星?
「あたしの為を思ってなんて言い方してるけど…嫌なら嫌って言えばいいじゃん…」
素直に言ってくれれば…
「あたしがコレを気にしてたから高橋は付き合ってくれたんだよね!?自分がこうしちゃったから!」
胸を指差せば、高橋の視線も自然とそこへ向かう。
この服の向こうの傷を、高橋はどんなふうに見てたんだろう。
見るたびにどう思ってたんだろう。
……考えただけで、気持ち悪くなる。
やっぱり、コレのせいで。
結局こうなるんだ。
病気や傷を気にしてた。
臆病になってた。確かにそうだった。



