素敵な、人……?
何、それ。
「は……?素敵な、人?」
「……はい」
顔を上げて問いかけたあたしに、高橋は優しく頷く。
なんで、そんな顔してんの?
何かを、諦めたかのような…。
確かめたい。だけど、聞いてはダメだと思う自分もいる。
けれど、聞かなきゃ……。
「それって、大学に行ったら高橋の他にあたしに好きな人ができるかもしれないってこと?」
発作でも無いのに、強い衝撃を受けたかのように心臓が、胸が、苦しくなる。
声を出したくないのに、深く聞いてみたくて思わず聞いてしまう。
にっこり穏やかに笑う高橋を、この時は嫌いだと思った―――
「……そうかもしれませんね。言ったでしょう?いろんな人がいる。もちろん、岡本さんのことを好きになって、気にしていることも全部受け入れてくれる人もいるはず。歳も近いだろうし、大学生だから働いてる僕と違って自由に遊びに行くこともできるだろうし、若いから話も、遊びも楽しめるだろうし」
「………っ、」
「まぁ、それは大学だけじゃないと思いますけど。有岡くん…でしたっけ?彼も優しそうだし話も盛り上がってましたもんね」
高橋が、どういうつもりでこんなことを淡々と口にしているのかが分からない。
どうして、そんなこと言うの?
私と高橋、ここは病院で、今は医者と患者だけど
付き合って、るんだよね……?
普通、そんなこと言う?
「なんで、そんなこと……」
「岡本さんは傷や病気のことで受け入れて貰えないと思ってるかもしれないけど、そんなことないんだよ」



