ただでさえいろんなことがごちゃごちゃしてる今、こんなことで喧嘩なんかしたくないのに…!
「ごめん……」
その言葉を聞いて、すぐに後悔が訪れる。
なんで謝るの。
ぽん、と優しく頭に乗った感覚。
そのまま優しく手が動いていく。
高橋は、ぼんぽん、とあやすように撫でてくれるけれど私の心はすぐには穏やかになりそうもない。
下を向いているからか、涙が出てきそうになって、ぐっと目を閉じる。
「……どうして、大学に行かせようとするの?」
下を向いたまま質問する。
声が震えそうで、力を入れれば心が苦しくなる。
手術をさせようとした時も、写真展に行かせないようにした時も、高橋には必ず理由があって。
それを思って私に言っていた。
今回は……何で?
いつもはダメダメ言ってるくせに。こういう時ばっかり。
俯いたまま、高橋が答えを教えてくれるのを待っているあたしに、
高橋は撫でるのを止めずに心、とあたしの名前を呼ぶ。
「……僕はね、もう我慢して欲しくないんだ。行きたいのに、周りのこと気にして行かないなんてそんなことして欲しくない。今までいっぱい我慢したんだから、もう我慢する必要は無いんだよ」
……うん。
ゆっくりと頷けば、少し高橋は笑ったような気がした。
……だけど。
「それにね、」
続けて届いてきた言葉に、私は固まる。
「大学は視野が広くなります。いろんな考えや、いろんな人がいて……その中で素敵な人と出会うかもしれない」



