「行きたいんじゃないの?」
「え、ちょっと待って何言って…」
「何歳までじゃないと行けない、なんて決まりは無いし、ある程度人生を経験してから大学に通う人だっているし……。
周りよりも年齢が上になってしまうことは気にしてしまうかもしれないけれど、そんな事は仲良くなれば誰も気にしないだろうし」
「高橋、」
いきなりどうしたの。
「今から勉強して……今年度の受験が難しいなら来年にすればいいから。それまでにこうしてどこに行きたいか、何をしたいかを見つけて……」
「待って高橋」
理解できないままあたしを置いてどんどん先を行く高橋に、ストップ、と顔の前に手を出して止める。
いきなり顔に近付いてきた手に驚いたのか、口を閉じた高橋。
何を言い出すかと思えば…大学とか、受験とか、何?いきなり、どうしたの?
「何言ってんの?大学って。これはただ暇潰しに見てるだけで別に……」
大学に行きたくて見てるわけじゃない。
そりゃ、パンフレットはとても楽しそうに通ってる学生が沢山載っていて羨ましいな、と思わないことは無いけれど。
今さら、大学に行きたいだなんて思わないよ。
それに、大学に行くよりも私にはしなければいけないことが沢山ある。
「僕からは、行きたそうに見えるよ」
「そう?なら高橋の勘違いだよ。行きたくないなんて思ってない。……分かってるでしょ?高橋」
私は真っ直ぐ高橋を見上げる。
もうあと数ヶ月すれば、1年。
365日にも満たないけれど、
入院してあたしの担当医になって。
1年のほとんどを一緒に過ごしたって言っても言い過ぎじゃないと思うくらい高橋は傍で私を見てきたはず。
いろいろと。
私が病気に対してどう思っていたのか、
自分が病気になったせいで友達や親にどれだけ迷惑をかけてきたのか。



