横田さんにそう言われると、聞いてみるという選択が自分の中の選択肢に入るから不思議。


いっそ、高橋に直接聞いてみるのもいいのかもしれない。


あたしのせいで縛ってるみたいなのは嫌だし。


どうしても悪い方に考えてしまうのはどうしたらいいんだろう。


前向きな横田さんとは違って、やっぱりあたしはどうしても明るく考えられない。


「どうしたら、前向きになれますか?」


どうしたら。


そのうち、横田さんのように明るい考えができるようになるのだろうか。


聞いた横田さんは、「う~ん」と考えるように上を見上げる。


「きっとね。心ちゃんもこの病気のせいで我慢することや嫌なことが多かったからそれに慣れちゃってると思うの」


私もそうだったから、と横田さん。


「楽しいことや、楽しみなことがあってもいきなりの発作や体調不良でダメになっちゃうことがいっぱいあったでしょう?だからいつも”もしも”って最悪のことを考える癖がついちゃってるのね」


言われてみれば、そうだ。


なるほど、と思う。


「でもね、私は旦那さんのおかげで前向きになれるようになったの。楽しいことを想像しろって。そしたら自然とその通りに自分が動こうとするからって。人間だから外れることもあって、もちろんマイナスなこともあるけれど、それは自分の勘が外れたんだって思えばいいんだって」


楽しそうに話す横田さんを見ながら、その向こうに横田さんをこんなに素敵にしてるのは旦那さんなんだなって姿を思い描く。

「きっと、高橋先生も心ちゃんが前向きになるように引っ張ってくれると思うな」

高橋も。確かに…。高橋はいつだって前向きだ。ネガティブになっているのはいつもあたしの方なのかもしれない。


「そうだと…いいですけど」


ぽつり。願望とも言えるそれを口から落とせば、ふんわり笑った横田さん。