赤ちゃんなんて抱いたことあったっけ?
泣かれないだろうか。
おずおずと両腕を差し出すと、その上に乗る赤ちゃん。
すぐに自分の胸で支えるようにして、抱き締める。
軽くて、でも温かいぬくもりは冷房が利いている室内に程よくて。
「……すごく大人しいですね」
「でしょう?人見知りしなくて誰にでも抱かれてくれるから助かるの」
目を開いて、一生懸命あたしの顔を見てくれてる。
赤ちゃんは見るもの全てが新しくて、新鮮なんだろうね。
この人誰なんだろう?って思ってるのかな。
顔を近付けて見れば、母乳の匂いって言うのかな。
赤ちゃん独特の匂いのようなものが鼻孔を擽った。
小さいぷにぷにの手が懸命にあたしに向かって伸びてくる。
「あっ」
ペタペタと、頬を触られて、くすぐったい。
そのくすぐったさに思わず笑いが零れながら、その小さい手が唇に。
「……ぁ」
パクパクと唇を動かしてあげると小さく声を出した赤ちゃん。
「笑った……」
「ご機嫌みたい」
少し顔を上げて横田さんを見れば、横田さんも赤ちゃんを穏やかに笑いながら見ていた。



