やっぱり今でも服を着る時は見えないかなって気にしてしまうこともある。
この夏真っ盛りの季節、プールや海に行く予定も立てたりしない。
椿は仕事で大変みたいだけど、どこかに行きたい!とは言ってる。
あさみもどこかに行きたい!とは言うけれど、二人ともあたしを気遣ってか、
この季節だったら真っ先に思い付くだろうプール、や海なんて一番に出てきそうな言葉は一回も言わない。
「……私もね、心ちゃんと一緒で傷が出来るのは嫌だった。だけど……その他にも嫌なことがあってね」
思い出すかのように、どこか一点を見つめる横田さん。
「聞いても……良いですか?」
あたしは傷だったけれど、それ以外でも嫌だと思っていたのなら、それが何なのか聞いてみたいと思う。
伺うように聞いたらあたしに、横田さんは視線をあたしに向け「もちろん」と笑う。
「私はね……子供を産めるかが心配だったの」
静かな屋上で、静かに聞こえてきた横田さんの声は、あたしが全く考えてもいなかった悩みだった。
子供……
あたしは遊ぶことばっかり考えてたし、傷が出来たあたしを好きになってくれる人なんていない、とは思ってたけどその先の子供……は考えてなかった。
「こんな事言うとちょっと恥ずかしいんだけどね、私、子供の時から夢がお嫁さんだったの」
本当に少し恥ずかしそうに目を伏せる横田さん。
「いつか結婚して、子供が欲しいなぁって。……でもね」
夢を語っていた表情が一変、曇っていく。
「病気になって、それも一番大事な部分で……もう子供が産めないかもしれない、子供が産めない女と結婚してくれる人なんていない……そう思うとなんで私がって悔しくて悲しくて。手術の後ずっと塞ぎ込んでたの」
手術が終わった後の悔しい気持ち、悲しくてでもどうしようもない気持ちは良く分かる。
誰にもあたしの気持ちは分かんないって思って、何を言われてもイライラして結局……高橋に当たっちゃったんだよね。
「先生達もね、子供はリスクが高いかもしれないけれど、産めないことは無いからって言ってくれたの。むしろ手術で悪い所は治したから希望が見えてるって。それでね、前向きに頑張るしか無いかなぁって」



