「高橋……に、何か言われて、来られたんですか?」
高橋に。どういうつもりで頼んだのかは分からないけれど、直感的に思った。
それを聞いて、目の前の横田さんも困った顔をする。
それは肯定ってことで。
……やっぱり。
ふいに彷徨わせてしまった視線に気づいたのか、慌てて横田さんは付け加える。
「高橋先生を責めないであげてね?退屈してるみたいだから、良かったら会って話でもしてあげてって言われたの。丁度私の定期検診もあったから、ただ、日にちがずらせなくてもしかしたら退院しちゃってるかもしれないって焦っちゃったけど……」
「なんだか……すみません」
あたしが頼んだ訳では無いけれど、申し訳なく思う。
まだ小さい赤ちゃんを連れて、あたしの所まで来てくれて。
あたしと話すよりも、もっと他にしなくちゃいけないことは沢山あると思うのに。
あたしの時間を取ってしまうって横田さんは言ってたけど、同時にあたしのせい……
高橋が頼んだせいで横田さんの時間も取ってしまってるんだよね。
「謝らなくていいの。私もね、心ちゃんに会ってみたかった」
だから、会えて嬉しいの。にっこりほほ笑む横田さん。
あたしまで……自然と笑顔になってしまうのは、何でだろう。
「…あたしのことも、高橋から聞いて……?」
「聞いたうちに入るのかな……?ちょうどこの子を産んでお世話になった先生方に挨拶ついでに見せようと思って行ったの。その時に高橋先生に会って……話を聞いたら今は19歳の女の子を担当してるって言ってた。まだ、心ちゃんが手術をしちゃう前で。名前は会いに行きたいんですけどって高橋先生に連絡したら教えてくれたかな。あと病気のことも……私の方が先輩だから知ってる」
横田さんの顔を見ている限り、何かを隠してるとか、そういうのは無さそう。
だから、本当に名前と病気の事しか知らないんだ……。
「あ、でもね!今日は心ちゃんのまだ知らないことについてお話しようと思って」
トン、トンと赤ちゃんを優しく一定のリズムであやしている横田さんは楽しげに話す。



