「飲み物、何が良いですか?」
屋上についてすぐ、いくつかある自動販売機の一つの前に立った横田さんはあたしに聞いてきた。
財布を用意してる所からして……
「あ、大丈夫です。自分で買うので……」
申し訳無い。
「でも、ちょっと時間取っちゃうでしょ?あたしに払わして?」
「でも……」
そういわれてもあたしだって退屈していたから丁度良いし、会ったばかりの人に奢って貰うのはちょっと……。
困るあたしをよそに財布から小銭を出して自販機に入れていく。
「ほら、もう入れちゃった……どれが良い?」
「えっ、」
早く早く、と急かされて、ここまでされて今さら断るのも……
仕方なくお金を投入された自販機で売られているジュースを見る。
「じゃあ……アップルジュースで……」
「はい」
代わりに横田さんがボタンを押してくれて、激しい音を立てて落ちてくる缶。
「あたし取りますよ!」
そのまましゃがんで取ろうとした横田さんを見て、あたしはやっと体を動かした。
赤ちゃんを抱えてしゃがむのって大変じゃないだろうか。
いつも抱えて行動している横田さんからすれば何ともないかもしれないけれど。
隣にしゃがんで缶を取り出せば、ありがと、と頭上から聞こえた。
続けて、落ちてくる缶。
オレンジジュース。



