誰ですか?
と続けようとした言葉を途中で区切る。
余りにもストレートに聞きすぎてちょっと失礼かも。
誰なのかは知りたいんだけど何て聞こうか…少し苦笑いすると、「あ」と気が付いてまた、笑顔になる目の前の顔。
「すみません、会えたことに嬉しくて……私、横田と言います」
「横田、さん?」
「はい」
聞き返すとにっこり笑って赤ちゃんを抱きなおす。
少し下を見れば横田さん、の腕を握りながらキョロキョロしてる赤ちゃん。
まだ小さい。
1歳、くらい?
「ちょっとお話……いいですか?あ、もしかしてどこか良く途中でした?」
「いえ、ちょっと散歩したいと言うか、飲み物買いに行こうかと……」
持っていた財布をちょっとだけ持ち上げて、見せる。
「それじゃあ、屋上でゆっくり何か飲みながらお話しましょうか。室内ならクーラーも聞いてますし」
「あ、はい」
明るい人だなぁ……。にっこり笑顔がとてもかわいい。 ゆっくりと先を歩くその背中を見ながら思う。
……屋上は、まったく人がいなくて閑散としていた。
ガラス貼りになっているので、外に出なくても充分外の景色を見ることができる。
外に出るよりも室内にいた方が冷房が効いていて快適。
あたしは、この冷房世界がたまに体を悪くしそうで外に行きたくなるけど。



