[……もしかして俺の事知らない?]
控えめに聞かれて、申し訳ないと思いながら頷く。だって、知らないもんは知らないし。
擦れ違ったりは在籍していた3年間のうちに一回くらいはあったかもしれないけれど。
擦れ違う人をいちいち覚えたりしないよ。
それに途中入院してた時があったから。
クラスの人の名前と顔を一致させるのだけで精一杯で……。
行事の時にすっごく目立ってインパクトがあることをした……なんてことがあったら顔くらいは覚えていたかもしれない。
だけど、それも思い返しても全く。
[そっか]
しゅん、と、少し淋しそうな顔をした有岡くん。
[ごめん……]
犬みたいだな。と思いながらも申し訳なくて謝る。
[や、良いよ良いよ!逆に離れてたのに知ってた方が奇跡に近いし]
……じゃあ何で。
有岡くんはあたしを知ってんの。思わず心の中で突っ込む。
これは気になる。
あたしだって目立つようなことなんて一回もー……、
あぁ、病気で倒れて救急車で運ばれたのはちょっと、いや、かなり目立ったかも。
[何で有岡くんはあたしをご存知で……?]
[え?自覚無かったの?有名だったじゃん]
有名だった……? やっぱり、病気で、って事?
中学の経験を踏まえて、高校は隠し通せると思って病気のこと、周りに黙ってたんだよね。
もちろん健康診断書には書かれるから先生達は知ってたけど。



