垂れた髪に隠れて見えなかった神田さんの顔が上がる。


その顔は、苦しんでいる顔ではなく。


笑顔で。

「へへへ。苦しいから送ってって」

「………、」

「じゃないと本当に発作起こっちゃうかも」

へらっと笑ったその子に

こっちに背を向けている高橋の力が抜けたのが分かった。


…ほっとしたような高橋。


仮病か…。

「ほんとに…いい加減にしてください」


ぽんっと高橋が神田さんの頭を叩く。ひゃ、と可愛い声を上げて叩かれた部分を両手で押さえる神田さん。


……そんなんじゃダメなんだよ。そんな怒り方じゃ!


支えて神田さんを起こした高橋はくるっとこっちに振り向く。


「岡本さん、じゃあ、僕この子連れて……」

「―――っ、」

「……岡本さん?」

「…え?」


ハッとしたあたしに、今度はこっちに高橋が心配そうな顔を向けてきて。


「大丈夫ですか?顔、真っ青ですよ」