「とにかく部屋に戻ってください」

「先生も一緒に戻ってくれるなら戻る」


ぎゅっと握っていた腕を無理やり引きはがして、高橋は振り返ってあたしを見る。


「僕は岡本さんが具合悪そうなので送って行きますから」


「や、あたしは別に…」


一人で帰れるし。

それに送らないとこの子、またどっか行っちゃうんじゃ…。


「やだ!あたしを送ってよ」


「なら一緒に…」


「やだ!」


わがままだなぁ。


あたしが言えた事じゃないかもしれないけれど。


地団太を踏みそうなその子に、呆れた表情を浮かべる高橋。


「…いいよ、あたしもう少しここで休んでから行くから」


向こうも嫌だと言うけれど、

こっちだって嫌だ。

うるさそうだし。

や、うるさいし。


必要以上に高橋にべたべたする様子を眺めながら

どうして一緒に部屋まで戻らなきゃいけないの。


「ほらっ、そう言ってるしいこ?」


ぐいっと腕を引っ張って歩き出す神田さん。

だけど、その腕もするっと抜ける。

「…大丈夫ですか岡本さん?」


あたしの肩を持ち、顔を覗き込んでくる。



「大丈夫だって」