「神田さんの担当医でもありますけど、僕は岡本さんの担当医でもあるんですよ。1人じゃありません」
高橋が言う。
…取らないでくださいって言ったって。それはこっちのセリフだ。
須藤先生といい、この神田さん…といい。
付き合ってることを知らないことを言いことに言いたい放題。
疲れる。
勝手にして、と呆れるあたしに、「でもでも」と神田さんは高橋の腕を引っ張りながら続ける。
「治ったら先生あたしと付き合ってくれるんでしょ?」
「……は?」
高橋の目が見開くのを見ながら、あたしも自分の目が驚いて見開いてしまうのを感じたし、口からはひどく冷たい言葉がこぼれた。
あたしの冷たい視線に高橋が焦る。
「何言ってるんですか」
「だって」
「くれるんでしょ?ってそんなこと行った覚えはありません!」
必死な高橋。そこまで必死にならなくても。
「だって……あたし先生のお嫁さんになりたいもん」
ううーっと言う神田さん。
嵐が二つもきた。
…こいつもか。
腹立たしい気持ちはあるけれど、さっきの須藤先生の件で少しだけ免疫が付いたのか体はすうっと冷めていくのが分かる。
「…高橋さんはよくおモテになることで」
ぽつりと呆れて呟いた言葉に、高橋は腕にくっつく神田さんを引きはがそうとする。



