高橋が叫んでいる方を見れば、数人の行きかう人の中に立ち止まってる一人の女の子が見える。
「馬鹿」
呆れて思った言葉が高橋に聞こえたかどうかは分からないけれど出てしまった。
こんな所から呼び止めたって逃げるに決まってんじゃん。
捕まえる気があるの?あたしだったら逃げる。即逃げる。
立ち止まったのは、誰が、どこから呼んだのか探していたのだろう。
手をあげる高橋を見つけたその子。
あ、気付いた。逃げるぞ…。
と、思ったのに。
その子は高橋を見つけると、ニッコリ笑顔になる。
ここからでもそれが分かった。
あたしの思っていたことと違う。
その違和感に、
え?と思っていれば。
「高橋せんせ~~~~」
あろうことか、その子はこちらへと走って駆け寄ってきて。
ぎゅっと。
高橋に抱きついたので、私は目を見開いた。
「何走ってるんですか!」
怒ってその子を引きはがそうともがく高橋。
え…そこ?
抱きついてきたことは咎めないのか。
とぼんやり突っ込む。
「どこに行こうとしてたんですか」



