電話に出る高橋を見つめる。

けれど、次に高橋から出てきた言葉はあたしが想像していたものと全く違うもので。


「いない?…どこに…あ、はいいました…またですか…」


まるであたしが逃げ出して、そのことを看護師さんから教えて貰ってるような電話。


あたしのことかと一瞬思う。


「どこに行ったんですかね……」


でもそれならいるって高橋言うよね。

「分かりました。僕は1階と病院の周りを探してみます。見つかったら連絡お願いします」

電話を切りながら立ち上がった高橋を見上げる。

「どうしたの?」

「僕の今担当してる患者さんが…あ、高校生の女の子なんですけどいなくなったって」


「え、」


「どこにいったんですかね…」


はぁ…と高橋はため息をついてピッチを胸ポケットへしまう。

「あたしみたいな子がいるんだね」


「僕もそう思ってます」


「……そう」

「まさか人生でもう1回そんな患者さんを担当するとは…」

そんなことあたしに言われても。

「…脱走の先輩の意見を聞いておこうかな。どこに行ったと思う?」

にこり。

意味深な笑顔を向けられてむっとする。

失礼な。


「…大体どんな子かも分からない子の行きそうな場所なんて分かるわけないじゃん。…まぁ。高校生なら雑誌かな?」