…服を捲ったと同時に入ってくる、冷たい聴診器。


「あーーーー……」

「……喉は診てないよ」


聴診器を付けたまま、怪訝そうに眉を寄せてあたしを見る高橋。


分かってるよそんなこと。だけど。


まともに診察されてるのに飽きたんだもん。


「あーー……聞こえる?」


「煩くて肝心の音が聞こえません。早く終わらせたいなら静かにしないと、いつまで経ってもこのままだよ」


肌に聴診器を当てたままそう言われて、しょうがないから口を閉じた。

仕方ないから、からかうのはそろそろ終わらせてあげよう。

黙って大人しく深呼吸を始めると、高橋は心音に意識を集中させてるのかどこかに視線をやって固まった。


……静かに、あたしの呼吸音だけが聞こえる。


一定の間押しあてられた聴診器は、高橋の衣擦れの音と共に離されて、また少し離れた別の場所へ。


さっきよりは生暖かいそれ。


……別に心音、異常無いと思うけどなぁ。


あたしの体の中で、どんな音で脈を打っているのかは知らないけれど打っている感じは別に異常無いと思う。


「……うん、大丈夫」


「でしょ?わざわざ診察しなくていいのに」


しばらくして聴診器があたしの服の中から抜かれた。