さすがに笑顔が消えてしゅん、としてしまったアキラくん。
それを見た高橋が、また何か口を開く前に言う。
「戻るよ?」
「うん。……先生」
降ろして。と身じろぎしたアキラくんを、高橋がゆっくり床に降ろせばありがと、と高橋を見て言った後あたしの方へ。
え?と思いつつも、引かれた服の感触にしゃがみ込めば。
「おねーちゃん、また会える?」
首を傾げて、聞かれた。
可愛い。ほんっとうに可愛い。
あたしもぎゅってしたいと思うくらいに。
「うん。高橋“先生”にアキラくんの部屋聞いて、今度遊びに行くね」
だから薬頑張って。
あたしの言葉に嬉しそうに頷いて、「ばいばい」と背を向けて歩きだした。
と、
「ごめんね秋くん」
目線を下げ、アキラくんを見ていた女医さんが高橋にささやくように、一言。
[ごめんね]
アキラくんを、って意味は良く分かる。
分かるけど……その後の“秋くん”って何?
目の前でさりげなく行われた仕事仲間同士の会話に固まる。ただの先生同士の何気ない話のはずなのに、何かがあたしの中で引っ掛かった。
秋くん……?
高橋先生って呼ばれてることが多いけれど、高橋って同い年くらいの先生にはそうやって呼ばれてんの?



