逃げていたことがバレたアキラくんは、ヘラリとあたしを見て笑う。
「薬、ちゃんと飲まなきゃダメでしょ?」
「……ごめんなさい」
素直に謝って可愛いなぁ。あたしだったら絶対に謝らないで言い返しちゃうと思う。
嫌なものは嫌だよね。わかるわかる。
「とにかく、部屋に戻るよ。岡本さん、ごめん、先に部屋に……」
アキラくんを部屋に送る為だろう。
顔だけをこちらへと向けてあたしに言う高橋に別にいいよーと頷こうとすれば。
「アキラくん!いた!!」
バタバタと高橋の向こうから走ってくる足音が聞こえて。
あたしを見ていた高橋も、アキラくんもそちらを見た。
「あ!」
アキラくんが、ぎゅうっと高橋の首にしがみついて隠れるように顔を埋める。
「どこに行ってたの!」
ハァ、と息をついて、高橋に抱かれたアキラくんを見るのは白衣を来た……女医さん。
纏められた髪。
斜めに流された前髪。
化粧もそこまで濃くないけれどオーラがすごい。大人っぽい、落ち着きがある。
”できる大人の女性”というものにわぁーとあっけにとられる。女の先生もいたんだ……初めて見た。
「逃げて……お母さん達も探してたんだよ?」
「ごめんなさい……」
「もう僕が怒ってアキラくんも反省してるから。ね?」
高橋に怒られ、その後この先生に怒られて。



