……でも。高橋の目の前では、さすがに聞けないか。
残念。
「さ、何分外にいるんですか。ここ、暑いでしょ?部屋に戻りますよ」
腕を引っ張るように持ち上げられて、携帯を開けばここに来てから1時間くらい経っていた。
「えー…まだ大丈夫だよ」
「いいから。戻りますよ」
またうるさい中に戻っていかないといけないと思うと、憂鬱。
暑い、よりもあたしは静かな方を取りたいのに。
「聖も。仕事に戻れば?」
「はいはい、じゃあ戻りますよー」
ちぇ。
立ち上がった聖くんに続いて、あたしも仕方なく立ち上がる。
「また明日ね」
「あ、うん」
ニッコリ笑った聖くんが、口角を上げて、背を向けて院内に入っていく。
”明日ね”
その言葉で気付く。
多分、今日の続きを明日話してくれるんだろう。明日まで気になるけどお預けかぁ。
「明日も通うの……」
そんなあたしの隣で、ハァ、と横で溜息を吐いた高橋。
「楽しみー」
「戻りますよ」
歩き始めた高橋の隣に並んで歩きだす。



