天城越えが聞こえてくる。 チヨ君の声だ。 「ケンタ君、肩乗って。」 こんな人混みの中じゃ、そんなに背の高くない俺に人探しは困難だ。 「どうだ。お母さんいたか?」 「…いない。」 きっとお母さんも探し回っているだろう。 『なんちゃってヤンキーでもいいじゃなーい!人間だものおぉぉぉぉぉぉぉぉ!』 あ、ガク君の声が聞こえる。 急がねーと。 「ケンタ君のお母さーん!いませんかー!」 「お母さーん!」 人が多すぎて声も届かない。