強めた力を抜く。 すると先輩は小さく穏やかに笑って私を見た後、引くようにして走り出した。 驚いた・・・のは確か。 だけど、もっと別な感情があった。 翔に見られたくない。 見られたくない。 好きだから? 好きだから・・・。 「正解です」 審判に紙を見せて合格をもらうと、交代。 並んで列に戻ると、何人かの鋭い視線がチクチクと刺さった。 「お疲れ裕子ちゃん」 離れた手と同じに先輩が言う。 「お疲れ様です、ありがとうございました」