自転車の方が楽なのは分かっているのに、何となく、歩いてきた。

ビルの中、数階分が手芸用品、な店。

生地売り場まで階段で上がる。 


エレベーターあるんですけど。


思いつつ、なぜか、過酷な方を選んでしまう。

あと少しで、生地のフロア。

顔を上げた。

フロアの方から降りてこようとして、足を止めたヒトがいた。

その顔が、笑みを浮かべる。


あ。
連。


何の心の準備もなかったから、白亜はドキっとした。


学校じゃない、風景の中の、連も、いい。

ふんわりした、笑顔。

その笑みで、白亜を見ている。

笑ったまま、開いてく、唇。

何か、言う。

「もしかして、今頃、生地、買いに?」

喋った。