愛乗りシンドバッド

鼻の下を伸ばしかけた時、
異変に気づいた。

「……なんだあれ?」

周りに比較するものがなく
おかしいと思ったのは
それらがずいぶん
近づいてからだったが、
海のほうに飛んでくる
鳥の群れは
一羽一羽かなり
巨大なものに見えた。

「……まさか、
もう来るなんて」

アッバーサさんの
腕をつかむ力が増した。

道行く人たちも
俺らの視線に気づいて
立ち止まり、
横を歩いていたカップルの
焦燥を帯びた声が
次第に大きくなっていき、
そして、グアアッ――と、
聞いたこともない
恐ろしい雄叫びをあげた
バカでかい鳥の化け物が
すぐ頭の上を
通り過ぎていった。

「きゃあー!」

どこからともなく
悲鳴が湧いた。