愛乗りシンドバッド

「おーい、ハル。
見てぇ。ほら、彼女。
さっき軽くそこで
知り合ったんだけどさ。
なあに、ほんと軽くね。軽く」

そう鼻の下をこすって言うと、
ハルはその先の言葉を
待たずして言った。

「アッバーサじゃないか」

「あら、ハル様。
……ハル様の
知り合いの方でしたの?」

……何。知り合いなの?

「知り合いも知り合いさ。
こいつが噂の
ラブ乗りシンドバッドだ」

……ぐはぁ!

「……ああ、
それではこの人が」

彼女はそれで
何故か察してしまい、
さらに持っていた氷あずきの
スプーンまで
落としてしまった。