愛乗りシンドバッド

まぁ眩しいのは
本音ではあったが、
彼女はクスッと
笑みをこぼすと
横を静かに通り過ぎていった。

当然か……。

これじゃあ山田と同レベルだ。
木綿のハンカチーフが
欲しい。

だが、彼女は別に
一笑に付した
わけじゃなかった。

すぐ後ろから
語尾を弾ませた声が
さざ波と共に
聞こえてきた。

「ねぇ、
かき氷が食べたいなっ」

その時、俺の胸には
どんな千夜にも勝る
まどろみのようなものが
駆け巡り、はぜる。

馬鹿な話と思わないでくれ。

古来より人はそれを
一目惚れと言うのであろう。