愛乗りシンドバッド

首筋から胸元をあらわにした
真っ白いローブを着て、
サンダルを片手に持ち、
目の前まで来ると
そこに立ち止まる。

風で乱れる髪を
手で抑えているのが
とても女性らしく感じた。

向き合っても口を開かず、
なまめかしく濡れた瞳を
ジッと俺に据えている。

俺も見つめていた。

そしてわかるのは、
少なからず人に
好意をもっている時に香る
柑橘系の感覚が
笑顔の裏に表れていることだ。

「とても、いい天気ですね。
お日様の下で
気持ちよさそうに
カモメも鳴いているわ」

彼女は絹のような
声で言った。