愛乗りシンドバッド

「……どうしたの?
ほら、こっちおいで!」

彼女はすました顔で言う。

……何いまの、幻覚?
それともただの気のせい?

気味の悪いものを見て
困惑気味になっていた時、
聞き覚えのある声が
潮風に乗ってやってきた。

「やぁ、
困っているみたいだな。」

ハッと顔を横に向けると
屋上の手すりの角っこに
得体の知れないものが
暗闇の中、立っている。
そいつに驚いたのは
俺だけじゃあない。

「ち、ちょっと
そんな所で
何してるんですか!?
夜は屋上に入るの
立ち入り禁止ですよ!?」