愛乗りシンドバッド

看護師さんに
見つからないよう
部屋を出ると
階段をゆっくり
一段づつ登り
屋上の扉を開ける。

生ぬるい潮風が
吹きつけると
そこには暗い街並みが
広がっていた。

けっして満たされない
夜の光。
それなのに人々は
明かりを灯す。

俺は屋上の柵を越えて
向こう側に立った。

夜空を見上げるといつもの星。

さそり座にいて座。
アルタイルに白鳥座。

……こと座は
ちょっと見えないな。