愛乗りシンドバッド

……ふぅ。

すると俺がいる個室には
もう一人看護士がいて、
病室の窓をもやもやが
吹き飛ぶくらいに強く開けた。

清潔な匂いにまじって
香ってくる微かな柑橘系の香り。

そして花瓶にさした花を
持ちながら
つかつかと歩みよってくる。

「泣いてるんですか?」

「ああ、…いや、
なかなか強烈な突っ張りだった」

と言って近くにあった
ちり紙で思いっきり
鼻をかぐ俺。

「我慢はよくないと
思いますよ。
彼女さんのことで
辛いのはわかりますけど。」