愛乗りシンドバッド

「おい、どうした!?
くうっ、離せでかぶつ!
……古鳥?
おまえ古鳥なのか!?」

女は俺にろくすっぽ構わず、
どうしてか部屋の隅にある
茶だんすに目を向けた。

太陽をずっと見ていたために
暗い光の跡が追いかけてきて
いまいち顔が判別しづらい。

だけど俺は必死に叫んだ。

そして黙っていないのは
もう一人。ハルだ。

ハルは地面を力強く踏むと、
エビのように体を折り曲げて
足の爪先で後ろの大男の
片目を蹴り上げ、
ひるんだ一瞬の隙をついて
赤い帽子の女に
シャムシールで迫った。

すんでのところで女は
身につけていた
日本刀のようなものの鞘で
その一撃を受け流し、
見事な距離感で全ての切り込みを
目の前でかわしていく。

まるで映画の殺陣みたいだ。

「ジン!
なぜ兄様を殺したんだ……」

「私のせいじゃないよハル。
すべてあなた達のせい。
王宮の人たちの
不用心なところが
悲劇を招いたんじゃない」