愛乗りシンドバッド

返す言葉を模索している
俺のポロシャツで
ハルはゴシゴシ
顔を拭いて血を拭うと、
準備がいいのかなんなのか
本に埋もれていた
スピーカーマイクを取り出して、

「あー……あー……
マイクテス、マイクテス」

木窓から半身乗り出して叫んだ。

「皆の者。よくぞやってくれた。
魔人は我々に恐れをなして
逃げてくれたようだ!」

暗い中庭から兵士が
雄々しく勝どきをあげる。

何百何千の心の思いが
俺の胸に飛び交ってきた。

すごい……。
いったい何人いるんだ?

だけど俺なんかが一緒に
窓から顔を出したら、
まもなくシャムシールが
首にめがけて飛んできそうだ。

これがカリフの存在感か。

「天を見よ。星が強く輝き、
裏切り者を討たんと
吉兆を知らせてくれる。
この勢いに乗って
今夜ジンのもとにたたみかける」

夜空を遠く指差すハル。

その先にあるのは
さそり座の
アンタレスあたりだろうか。

心臓の位置で赤く光るその星は
隣のケンタウルスの矢に
弓につがえて狙われている。