愛乗りシンドバッド

それは壁や地面にでなく、
空間にぽっこりと広がる
不思議な穴さ。
思いきって入ってみると、
中はまるで天の川を
歩いているような妖しさと
砂嵐を進んでいるような
苦しさがある所だった。
だがそこを抜けると
更に驚いた。

歩いた時間は丸一日ほどで
かなり長い距離を
進んできたはずなのに、
私たちの住んでいる王宮と
同じような王宮が
目の前に広がっていたからだ。
調べてみると間取りも
東西南北にある門の位置も
まるきり一緒。
ただ違うのは
石像が王宮のあちこちに
置かれていたことだ。
……石にされた兄様みたいに、
まるで生きているかのような
抑揚のある石像が」

……がっ。
それってまさか。

「穴を通った私らは
平成のこの千代田区に
たどり着いてしまった。
ここにいたみんなはすでに
石にされてしまっていたから
とりあえずは私たちも
居座らせてもらってるが、
ここの皇室とは関係ないし
余計な詮索は
しないほうがいい」

じゃ、じゃあ俺が興味本位で
触っていたあの石像……。

まさか、やめてくれよな。
そんな恐れ多い話。

俺は口を開けたまま
閉じることができなかった。

それじゃ日本という国を
潰されたような
ものじゃないか。