愛乗りシンドバッド

「大丈夫さ。
あなたがずっと
そばにいてくれるなら。
どうも俺は
満ち足りてないらしいんだ。
だからせめて
そのハープみたいな素敵な声で
俺の名前を呼んでくれ」

……うん、我ながらキモいセリフだが、
いや、死より怖いものなど
この世にはないのである。

だいいちこの人魚も
悪くは思ってない。

そんな気がする。

「…もう、仕方ないな。
さあ、起・き・て。
ハヤトくん。」

と同時に
温かい唇の感触が
ほっぺたに触れ
そそられる息づかいすら
感じたような気がして
思わず俺は痺れた。