愛乗りシンドバッド


橋から落ちた時、そんな会話を
つと繰り広げた気がした。

実際話したのかどうかって
聞かれたら
答えはあいまいであったが、
それまで静かな
べた凪の海の上で
ただ漂ってるような
穏やかな感覚でいれたのに、
それを機にして
急に頭に激痛が走ったと思えば、
今度は嵐の中に
ほっぽり出されたみたいに
鋭い苦しみが
全身を駆けまわった。

……いてぇ。……息が。

ここは誰も
手の届かない深海か。
俺は溺れちまってるのか。

「大丈夫?」

と、微かに目の前に
浮かび上がる、
太い骨盤の尾ビレに
上半身の柔らかなシルエット。

……ああ、美しい。
人魚が話しかけてくる。