愛乗りシンドバッド

そんな俺のナイーブな心情を
笑い飛ばしているように
星は夏の大三角形を作っていた。

心なしか邪意っ気たっぷりの
笑い声まで
浴室に反響した気がした。

俺はふと
ハルの言葉を思い出す。

『星の導くままに。
心を広く大志を抱け』

「……そうすれば
俺に足りないものも
見えてくる……か。
何だろう?
まさか愛ってゆーんじゃ
ないだろうな」

ピンク色の天の川の
流れをうった瞬きに
問いかけるように
独り言を呟いた。

「いいえ」

するといきなり
背後から女性の声が聞こえた。

振り返ったら髪を束ねた
さっきの召し使い達が
絹のバスローブのようなものに
着替えていて、
後ろにいるではないか。

大理石に埋め込まれている
ルフをかたどった
石の造型の舌をひねり、
大きな鏡の前の
金のライオンの蛇口から
お湯を出していたりする。