愛乗りシンドバッド


浴室は大理石の洗い場に
緑色のタイルを連ねた
八角形の台座からなる大浴場で
どこかローマを
彷彿させる造りだ。

そんな豪華な専用風呂に
俺は構わず飛び込み、
吹き抜けになっている所から
しばらくぼーっと
夜空を眺めていた。

ルフがアフリカ象並みの
黒い瞳を俺に向けて
近づいてきた時は
本当に生きた心地が
しなかった。

それに神の呼吸……。

王国に共同体……。

何かいわくありげな事も
言っていたけど、
こーして熱い風呂に入って
嫌な汗を流してみると
全部ただの作り話のよう。

なんだか世界が
もうろうとしちゃって、
まるで地球が熱でも
出してしまったみたいだ。