愛乗りシンドバッド

「でも神の呼吸法は実在します。
ハル様は間違いなく
それを知っている。
そしてシンドバッド様も
もしかしたら……」

アッバーサさんの瞳が
わずかに開いた。
そして――。

(今夜あなたが欲しい)

――と、まさに目と鼻の先から
彼女の小さな心の声。

「……私は
アラーの信徒としては
いいかげんなものだけど、
あなたとなら共同体でも
悪くないと思っていますわ」

そう言って悪戯に笑う。

「……へ?俺が……何て?」

……か、顔ちかっ。
今夜あなたがなんですって?

アッバーサさんは
意味深に微笑むばかりで
それ以上答えては
くれなかった。

そこで使用人が
風呂の支度が整ったと
やってきた。