愛乗りシンドバッド

「全てを司る紅星から
人は峻厳なる定命のもと、
御しるしに従い身を委ねる。
北の守護星より森羅万象を知り、
地に蒼翠を与え
息吹とともに陽を受ける。
風雲の意思を乞えば
知識に恵まれた王国に
基礎は築かれる」

と、水をすくうように
両手を前に掲げ、
『サラー』と呼ばれる
礼拝の動作を見せてくれた。

「国が潤い繁栄していくのは
君主や臣下の存在が
あってこそだけど、
自然界には神がたまわる
理というものがある。
理は世の中を平定させる
法律のようなもの。
それをもし自分の
好きなように操れたら
とても夢みたいな話でしょう。
すなわちそれができるのは神か、
神の呼吸法なのです」

ふんふんふん。

……なるほどね。

その含みのある言葉の意味は
とどのつまり要約すると、
俺にはまったく
よくわからないってことか。

「ごめんアッバーサさん。
……俺にはちょっと
難しくてさっぱり」

ただ、その神の呼吸ってのが
ハルの言ってた
星の航海術のことを
指してるんじゃないかと
聞こうとしたら、
突如、彼女は
顔を寄せてきて
俺の鼻に鼻を軽く当てる。