愛乗りシンドバッド

海岸を襲うルフを
ハルが予知したのかなんなのか、
俺まで巻き込んでくれたおかげで
リカちゃんと別れの挨拶の
1つもしていないのだ。
しくった……。

そういえば……と、
俺は思い出したように言った。

「……あの。
あいつはどうしたんですか?
……アッラシード・
びっ……ハルンは」

「ハル様は自室に
こもっているみたいですね。
いつも頭が痛くなるまで
調べものしたりしてるの。
イスラームの権威者は
賢明でなければならないから」

「あいつが賢明!?」

……これはまさか
笑うところとかじゃないよな。

「ええ。
ハル様の本質は
深く険しい所にあるのに、
それはそれは人々に
敬われておりましたわ。
それから無理して
カリフの長い即位名を
言うことはないですよ。
仲のよい方たちは皆さん
ハルと親しみを込めて
呼んでいるし、
ハールーン・
アッラシード王という
敬称もありますしね」

「ハールーン・
アッラシード王……ですか」

なんか聞いたこと
あるような……。