愛乗りシンドバッド

「お……っと」

よそ見をしていたために
前方の人影に気づかず
ぶつかりそうになってしまった。

つい頭を下げそうに
なってしまったが
すぐにソレと気づく。

ソレは宮廷のところどころに
無秩序に建つ、
人の姿をした等身大の謎の石像。

百人百様の動きで
一貫性もないうえに、
石像から語りかけて
くるんじゃないかってほど
妙にディテールに
凝っていたりする。

……まったくきもい趣味だな。

だからなのかずっと
誰かに見られているような
錯覚までするんだ。

先を行くアッバーサさんの
長い影が後ろに伸びて
俺のすぐ横で歩いている。

俺の影をたどれば
やはり誰かの隣で……。

……なんちって。