愛乗りシンドバッド

彼女が女の子の歩幅で
先にゆるゆると歩きだすので
しかたなくそれに合わせて
そろそろとついて行く。

生まれの高い家柄を
非難するわけじゃないが、
改めて見てもここは
普通ではない場所であった。

面積は庭の敷地を抜いたとしても
ざっと４ヘクタール。
東京ドーム一個分は
ゆうにあるだろう。

現代建築にありがちな
ライトアップはされていないけど
虫食いみたいに
窓から洩れる明かりや
外のかがり火で
荘厳なたたずまいが見てとれる。

ただ……建物の規模のわりに
使用人の数が
やけに少ない気がする。
はたと見かけたとしても
その格好もなんだか古典的だし。

それは外にいた番兵も
宮殿の外観や
インテリアも含めてだ。

たとえばいま歩いている
石造りの華やかな歩廊も、
シンデレラのお城を
イメージするというよりは
マハラジャが住みそうな
もっともっと古びている
砂まじりの
優雅な砦といった感じ。

王室ってのは
古きを重んじるものなのかも
しれないが、
それにしたって
時代錯誤もいいとこである。