愛乗りシンドバッド

下唇をぐっと噛みしめた。

ざーっと砂嵐のように
タイヤが道路を駆ける音は、
あきらかに曲がっていっていく。

……俺は、死のうとしてるのか。

恐怖というより関心というか、
つい少しだけ
まぶたを開いた俺は、
しかし橋から飛び出す
恐ろしさとは全く別の意味で
驚いてしまった。

橋の欄干に立つ人の姿。

それは一瞬の事で
無意識にハンドルをきっていたが
勢いは止まらず、
横浜港を見下ろしていた
そいつに体ごとぶつかり
共にベイブリッジの
真ん中から吹っ飛んでしまった。