海岸からここに来るあいだ
街は異常な渋滞が
延々と続いていて、
信号待ちの時に
タクシーの運ちゃんから
機動隊によって高速道路が
封鎖されていることを知った。

人命の救助は
何よりも最優先だが、
国家公安委員会と
内閣の意向によって
緊急事態の特別措置が
布告されたらしい。
それにより上の道路は
物々しい車が占有していると。

オバケ鳥に対する恐怖は
みんな同じで、
窓からタバコの灰を
道路にはじき落としつつ
気をつけろよと
運ちゃんは気を使って
声をかけてくれた。

アイドリング熱を発する
トラックのエンジン音と
止まっている車内から
聞こえてくるラジオのノイズが
今になっても鮮明に思い出せる。

……おかげで三人乗りでも
切符きられずに
やり過ごせたわけだ。