『私は大丈夫だから』

『あなたじゃなくても
平気だから』

『もっと幸せになりたいの。
だから他をあたってね』

離れていく彼女を追うと、
ハンマーで叩いた
鉄の塊のように
頭に何か響いてくる。

これが彼女の思い?

……ちょっと待てって。
俺にはまだ
伝えきれてないくらい
気持ちが残っている。

『もう、連絡しないでね』

……待……て。

俺が腕を伸ばすと、
スポットライトからはけるように
彼女の姿は薄れていった。

闇に紛れてしまった。


ツギハドウシタラ
イインダッケ……。


するすると
どん帳が下りてきても
まだ俺はそこに立っていた。

やがて認識もどんどん
薄れていくようになり
ようやくハッと俺は目覚めた。

……夢を見ていたのか。

素直で正直な夢だった。