入学式。
周りには半分以上初めて見る人ばかり。
保育園で同じだった人も、見た目が凄く変わっていた。
また仲良くなれるだろうか。
いじめられないだろうか。
そればかりだった。

入学式では、名前を呼ばれたら返事をしろと言われた。
「神谷 芽衣」
「はい」
この時、芽衣は周りの反応を気にした。
笑われないだろうか、と。
あまり笑われなかった。
少しホッとした。
芽衣は、自分の声にコンプレックスを抱いていた。
普通の女の子の声より低い。
それが暴言の中身の一つだった。
その声を聞かれてもあまり笑われない。
もしかしたら、ここでなら安心して普通に過ごせるかもしれない。
そう思った。
もし、周りが何も言わなくても、芽衣の性格が変わることはない。
何か言われる度に言い返す。
される度にやり返す。
それはなかなか変わらない。
それでも、周りが意図的に何か言わないならば、少しは変わるかもしれない。
しかし、現実はそんなにも安易ではなかった。
学校に慣れはじめた頃。
給食の準備をしているときだ。
ある事をきっかけに、クラスの男の子を一人、怒らせてしまった。