「どうにもなってないよ。」


「どうにも……って?」


「告んなかったもん。」




そう言ったあたしに、美帆は大袈裟に身を乗り出した。



「なにそれ?」


「呼び出したはいいけど、逃げたの。」





途端に美帆は、同情じみた目であたしを見た。






この女の何がキライかって、無神経な言葉と自己中さ、その哀れむような目だ。





「まっ、ヘタレなあたしらしいでしょ!」



中途半端な自虐ネタを言って、やり過ごす。



あたしの心には、ざらりとした感触が残った。




美帆は、まだ何か言いたげだったけど、さほど興味もないのだろう。


再び、昨日のデートの惚気話を事細かに報告してくれる。




その報告を、あたしは望んでいないというのに。






適当な相づちと愛想笑いをしながら、内心では腹が立って、苛立たしかった。




不機嫌である事が表情に出ないように努力してあげてるっていうのに、この女はそんな事にも気がつかないんだから呆れる。